週の始まりからパートナーが緊急で入院!
その日は朝早くからパートナーがこれまでに経験したことがない腹痛を訴え、歩けないため、近くの病院へタクシーで向かった。
一度、レントゲンを撮り、点滴と抗生物質の薬を処方され家に帰ってきたものの、夕方になっても治らず、再び病院へ。
白血球の値が高く、「体のどこかに炎症を起こしている」とはわかっているものの、原因が特定できず、別の病院を紹介していただいてタクシーに乗り込み、CT検査。
腸が炎症を起こしていたらしい。
そしてそのまま入院。
時間外診療なので、少し診察代が高価になる上、「申し訳ないのだけれど、大部屋はベッドに空きがなくて、ご用意できるのが個室の…一日1万円のお部屋になります」と!
「じゃ、それでお願いします」(それしか選択肢がないじゃない?)
そんな嵐のような慌ただしい一日の終わりを病室で迎え、次の日から、「パートナーの面会に病院へ通う」という生活が始まりました。
そんな時、図書館から「予約しておいた本が借りられる」とのメール。
病院に向かう途中、図書館に寄り、予約しておいた「ヒュッゲ」に関する本を受け取り、そのまま病室に持ち込みました。
読むにつれて、慌ただしかった心がほっこりとゆるんできました。
ヒュッゲとはわたし的には「小さな幸せを感じること」だと思う
「ヒュッゲ」とは世界一幸福な国と言われているデンマークの言葉。
「心地よさ」「人とともにいるときに感じるぬくもり」「不安のない状態」を表すのだそう。
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デンマークは所得税50%、消費税25%と税金が非常に高いため、夫婦はほぼ共働き。
郊外の一軒家に住む人はわずかで、ほとんどの人が1LDK、2LDKのアパートかマンション住まい。
リビングが10~12畳、寝室が6~8畳というさほど広くない部屋に住み、生活は質素を好み、ものも少ない。
冬の間は日照時間が7時間ととても短く、暗いので、自殺率も高く、うつ病患者も多いと言われています。
そんな決して恵まれたとは言えない環境で、デンマークは2016年、2014年、2013年の世界幸福度ランキング1位を獲得し、2015年には3位、今年2017年は2位。
「幸せだ!」と感じている人の割合がとても多いのです。(日本は51位)
デンマークの人々は「自分たちは幸福だ」と思うようになったのは、努力して環境を克服してきたためとは考えられないでしょうか。
その「幸せを感じる秘訣」は「ヒュッゲ」
デンマークに「ヒュッゲ」という独特の言葉と文化があります。
ヒュッゲとは明確に当てはまる一語が見つからないのですが、「大切な家族や親しい友人とともにほっこりした時間を過ごす」といった意味合いです。
北欧の国々はどこも夜が長いので、どうしても家で過ごす時間が長くなります。
「ヒュッゲ」の本来の意味は「巣ごもり」だと聞いたことがあります。
自分たちの「巣」を少しでも温かく、楽しく、心地よいものにして自分が孤独ではないことを実感するためにヒュッゲという概念を生み出してきたように思えてなりません。
デンマークの人たちは「幸せ感」をいつも感じられるように、積極的に日常を演出し、「幸せ」を習慣化してきました。
本には日本の日常にも簡単に取り入れられそうな「ヒュッゲ」を感じる様々な演出のヒントが書かれていました。
家を明るく照らすキャンドルを愛し、照明は温かさを感じる電球色。
日本でよく使用される白熱球は、一般家庭ではあまり使われないそうです。
狭い部屋を広く見せて、窓からさす貴重な自然光を部屋じゅうに反射させるための鏡を置く。
シンプルだけど温かみのある天然木の家具、ファブリック。
くつろぎに欠かせない自分専用の椅子(マイチェア)を持ち、花を飾る。
そんな中でも、わたしが興味を持ったのはティ・キャンドル。
紅茶やハーブティーを耐熱ポットいっぱいに作り、それをティ・キャンドルの上にのせて温め、ゆっくりといただく時間。
ハーブティーなどはお湯が程よく色づいてゆくのを楽しめますし、キャンドルのゆらゆら揺れる小さな炎がポットのお湯の中まで反射してとても美しいのです。
キャンドルの光とゆっくりと温まるお茶。
出来上がった温かなお茶をカップに入れて、その湯気に顔を近づけるのを想像しただけで、「ほっ」と体のこわばりが緩みました。
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本を読んで、わたし流にヒュッゲを解釈するとすれば、「日常の小さな幸せを実感すること」だと感じました。
「普通の毎日を特別な一日に変える演出(ヒュッゲすること)」をあれこれ考えるのは、毎日がミニイベントみたいな気分になれて、なんだか楽しそう。
本を読みながら、そう思った時、ふと、ヒュッゲを感じた。
一泊1万円の病室もヒュッゲを感じるための「人生の粋な演出」と思えば楽しくなった
読書の手を休めて、ぐるりと病室を見回しました。
病室には大きな窓があります。

連日降り続いた雪がふんわりと積もっているのが見えます。
鮮やかな色の青い空。
外の寒さからは完全に隔離され、この部屋は暖房でとても暖かで、パートナーはパジャマで過ごしています。(患者なので当たり前だけど)
病室の椅子にパートナーと二人で並んで腰をかけて、窓の外の景色を眺めると…とても静かな気持ちになりました。
お部屋にはわたしたちだけです。
一日1万円もする個室で、最初は驚いたけれど…。
ナースステーションも近いし、お部屋も広いし、シャワーもあるしトイレも独り占め。
声をひそめず話も普通にできるし、今朝差し入れたPCでパートナーがメールも打てる。
こうして、とても静かな気持ちで本が読める。
パートナーが、「よく事件の後の記者会見で『入院しています』という有名人とかは、こういう感じなのだろうか?」と。
…確かに。
病院の個室は世間とは隔離されていて、情報が遮断できる。
毎日医者の回診があって、必要に応じて適切な処置が施されて。
「ルームサービス(給食)もあるし、しかも五分粥とか消化にいいヘルシーメニュー!
ナースコールを鳴らせば若くてキレイなナースが駆けつけてくれる。とても安心だし、情報からも仕事からも解放されてリセットされる感じだ」
これこそ「巣ごもり」(笑)
望んでいなかったハプニングに見舞われたとはいえ、パートナーの体調が落ち着いてきた今…。
思うに、これは「入院」じゃなくて「リトリートだ!」
その瞬間、入院する当日の数時間前に、オラクルカードを引いたのを思い出した!
怒涛のような慌ただしさで、すっかり忘れてたけれど、その時出たカードは「アバンダンス(豊かさ)」のカードと「リトリート(休息)」

今の今まで、まったく結びつかなかったけれど、よく考えて見ると、万全のホスピタリティで…、というか本物のホスピタル(笑)
お部屋代金は高いけれど、それだけにとても静かで快適だ。
幸いにも引越ししたばかりで知り合いはいないから、誰も訪ねてこない。
一人になる時間もたっぷりあって、体を労るとともに「これから」のことをじっくりと考えるには最適な機会だ。
パートナーは、この休息の中で、何やら次なる構想を思いついたようだ。
アバンダンス(豊かな)リトリート…か。
確かに、まるで以前行ったスリランカのアーユルヴェーダ施設のついたホテルで滞在した時のようだ。(さすがにトリートメントやアフタヌーンティーの時間はないけれど)
そう考えると、自分たちでは絶対に望まなかった一泊1万円のお部屋も「人生が与えてくれた豊かな環境。演出」だと感じたら、「入院時期を楽しんでみよう!」と思えてきた。
そうしたら、夜、ひとりきりで過ごす家時間も、病院に向かうまでの道のりも楽しくなってきました。
幸せは「小さな幸せを見つけようとする心」から生まれる
病院は家から歩いておよそ1時間ほど。
天気が良ければ歩いてみたり、午前中だけは病院へ行く循環バスがあるので、それに乗ってみたりして通っている。
おかげで脚力もついたし。
途中、素敵なカフェに寄って、ちょっと遅いモーニングをいただくのが日課になりました。
カフェでお店の窓から天井を眺めて青空を見たり。

美味しいミントティーをいただきながら、読書したり。

ぼんやりと窓際の席で、ひだまりを感じながら過ごす。
太陽の光。
道に積もった雪。
冷たい空気。
病院でパートナーとお話しする時間。
病院のお部屋の温かさ。
家に帰ってからのひとりの時間。
パートナーとのメールのやり取り。
こんな日常の些細な場面ですらも、「楽しもう!」と決めた途端、キラキラと輝いて感じられました。
「豊かなリトリート」は入院しているパートナーだけでなく、わたしにとってもそうなんだな。
心は落ち着き、満たされていて。
「小さな幸せを感じられるように場を整える」という演出はもちろん楽しいけれど、「ヒュッゲ」に本当に大切なのは、その「小さな幸せ」を「感じよう、見つけようとする心を持つこと」の方ではないかと思いました。
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いつも楽しく拝見しております。
シンプルな生活の様子が大好きで、新しいお家の記事を楽しみにしております。
今回コメントしますのは、病院の個室代について気になったからです。
楽しくお過ごしのところ水を差しかねず迷ったのですが…。
ベッドに空きがなく、病院側の都合で個室になった場合、
差額ベッド代を払う必要がないというのがあるようです。
本来は説明があってしかるべきなのだと思いますが…。
私も突然の入院経験があるので、何となく気になったので
思わずコメントしてしまいました。
ご快癒をお祈りしております。
看病なさる方もどうぞくれぐれもご自愛ください。
素敵なお暮らしぶりが憧れで、記事を読む度背筋が伸びる思いです。
断捨離に励む日々です。
これからも楽しみにしております。
riko様
メッセージをありがとうございました。
昨日、パートナーが昨日、無事に退院しました。
今回の入院は「通院と入院」の微妙なラインでしたが、パートナーの様子が病院から帰れそうにもなかったので入院を決めました。
その後、お部屋の空きを調べていただいたら、個室しか空きが無い状態でした。
メッセージをいただくまで、病院のベッド代について何も知らなかったので、お話がお聞きできて、とても勉強になりました。
ありがとうございます。
そして、温かいメッセージ、とてもうれしかったです。
ブログ、頑張って更新いたしますので、また読んでくださいね。